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論文集・山形新幹線を考える

このページでは新在直通運転という全く新しい手法での新幹線運転を実現した山形新幹線についての様々な意見や考えを論文(テキスト)として掲載致します。

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試論・お座敷新幹線   【支部事務局長:柴田英成(鉄道観光研究家)】

平成19年7月1日、山形駅をはじめとする山形新幹線停車駅では山形新幹線・東京〜山形間開業15周年を祝う行事が行われた。 その僅か二日後の7月3日、東日本旅客鉄道樺阯瘤ミ長会見の場に於いて山形新幹線400系電車の置き換え廃止が公式に発表された。

山形新幹線は日本初の新在直通列車として1992年に開業し、東北新幹線から直接奥羽本線に乗り入れ山形県内を縦走しているが、 通常の俗に「フル規格車両」といわれる200系やE2系に代表される新幹線電車では元々が在来線である奥羽本線内の建築構造限界の関係から直接乗り入れは不可能であり、 新在直通専用車両として現在の山形新幹線用400系電車が開発され運転されている。

山形新幹線400系電車は台車は新幹線規格(標準軌)を履き、車体は在来線サイズの構造であることから、運転開始当初から走行安定性と乗り心地の良さには定評があった。

1992年7月の東京〜山形間開業当時は6両編成だった山形新幹線つばさ号であるが、利用客の増加から着座困難、指定席券確保困難が報道されるようになり、 慢性的な混雑を解消するために中間車1両が全ての編成に増結され、現在では全編成が7両で運転されるようになった。 また、1999年12月には山形県北部の新庄市まで延伸し、県北部観光や庄内エリアとの接続の利便性も向上している。

2004年に開催された山形ディスティネーションキャンペーン以降は「温泉新幹線」の別称のもと、山形県内各地の温泉への誘客にも貢献してきたのは記憶に新しい。 山形新幹線は首都圏と山形県内のビジネス輸送のみならず観光輸送の役割も大きく、輸送力列車であると同時に観光列車であるといっても過言ではない。

このような環境下にある山形新幹線であるが、最高営業速度240km/hの400系電車置き換え廃止による新型車両(E3系ベース新造車)への統一は 山形新幹線電車の東北新幹線区間での最高営業速度275km/h運転を可能とし、さらなる時間短縮効果を生むことから、 県内滞在時間の拡大と、そこから波及する経済効果の拡大にも繋がるものと期待できる。


さて、一方、廃車される運命にある400系電車であるが、最古の編成は開業前の試運転時から走行を積み重ねており、 車体の老朽化は否定できないものがあるが、在来線電車の中には400系電車よりも経年が進んでいても現役の車両も存在する。 485系や583系に代表されるこれらの車両は「更新工事」「延命工事」と呼ばれるリニューアル工事を施工し現在に至っているが、 その中には車歴30年を超えるものも存在し、この車歴は400系山形新幹線電車の2倍にも相当している。

ただ、東北新幹線・新青森延伸開業を控え全列車の275km/h運転を目指すJR東日本の立場で考えれば、 240km/h運転の400系電車が定期列車としての山形新幹線つばさ号に存在してはわが国の大動脈でもある東北新幹線全体の運転に支障をきたしかねず、 経年劣化が認められる山形新幹線400系電車の引退は時代の流れでもあり、止むを得ないものと考えられ、 「山形ジェイアール直行特急保有株式会社」からの車両リースという特殊な形態での運行をしている 現在の山形新幹線では所有権の観点からもJR東日本単独での大きな改造や延命工事というのも不可能なのだと推察する。


そこで提案したいのが、廃止される山形新幹線400系電車の観光列車化改造である。

全ての400系編成をジョイフルトレインとして改造する必要もないし、資金面からも不可能ではあるが、 例えば1編成だけを定期列車としての山形新幹線つばさ号に運用しない観光列車として改造出来ないものだろうか。
前記の通り、新在直通の山形新幹線は観光列車としての使命も兼ねており、特に団体や繁忙多客期(観光シーズン)に於いて 観光要素を前面に押し出し、椅子席のみの通常の新幹線とは違った車両(編成)を運転することで、 山形県内の観光にも大きく貢献でき、観光顧客の満足度も向上するものと考える。


では、この場合、どのような形態の改造が良いのだろうか。

現存するジョイフルトレインの多くは洋風(座席タイプ)であるが、ここではあえて「お座敷電車」を提案したい。 日本初、おそらくは世界初の「お座敷新幹線」である。

観光列車としてのお座敷列車の歴史は古く、1898年(明治31年)に山陽鉄道で運転されたのが国内初と記録されている。 つまり109年前からお座敷列車は我国の観光列車として多くの乗客に親しまれていたのである。 ちなみに、食堂車は1899年(明治32年)、寝台車は1900年(明治33年)に同じ山陽鉄道で運転されたのが国内初であり、 お座敷車両は食堂車・寝台車より僅かではあるが歴史のある車両であるとも言える。
また、鉄道事業者側(山陽鉄道)も輸送力としての鉄道車両と観光イベント列車を分けて存在させ 乗客のニーズに合わせて上手に運転していたことは史実が証明しているところである。


鉄道利用の観点は「日常」と「非日常」に分類され、ビジネスや通勤通学等の移動は前者の「日常」であり、 帰省や観光といった行為での鉄道利用は「非日常」に他ならない。 特に観光利用で求められるものは「楽しい非日常」であり、観光顧客の満足度向上には、 本来は目的地までの移動手段である鉄道車両の演出も重要な要素を持つものと考えられる。
何故なら観光という「非日常」は観光客が自宅を出た瞬間から始まっているのであり、 目的地に到着してから始まる訳ではないという、絶対的事実に裏づけされているからである。

つまり、観光での鉄道利用は、鉄道そのものも観光の一部分であると断言することができる。
観光旅行に於ける鉄道利用を観光の一部分として考えた場合、通常の輸送力対応車両(編成)とイベント性を前面に押し出した 観光用ジョイフルトレイン(お座敷等)とでは、どちらが観光客を満足させるかは明白である。

仮に400系を改造し、お座敷新幹線を製作する場合、編成は現行の7両編成を固持する必要もなく、 他のジョイフルトレイン同様に4〜5両編成でも良いのではないだろうか。
外観構造は大きく変える必要もなく、現行を維持し塗装のみを変更するか、可能であれば大型の展望側窓になると乗客は喜ぶだろう。 パブリックスペースと車内販売(売店)機能を兼ね備えたラウンジカーを連結していれば旅はさらに楽しくなる。

客室内には二通りの考え方があり、お座敷車両のタイプには古くから他の多くのお座敷車両が採用している側通路式と JR東日本所有の多目的お座敷電車「なのはな」やJR北海道が所有するキハ183系お座敷気動車のように中央通路式がある。
現在の山形新幹線400系電車の車内構造を考慮した場合、最も廉価に改造できるのは後者の中央通路式ではないだろうか。
中央通路式を採用した場合、まとまった一団体以外の募集旅行(主催旅行)でもそれぞれの乗客の分離が容易で また、車内の座席配置次第では「なのはな」のように乗車定員の確保も容易なものになると推察する。

運行区間は可能な限り、東北新幹線区間の途中駅で275km/h運転列車の退避停車をしてでも東京〜福島〜山形〜新庄としたいところであるが、 当面は試験的に福島〜山形・新庄間で全席指定席の臨時特急列車として運転し、旅客の反応を見ても良いかもしれない。
東北新幹線区間を走行する場合は275km/hで運転している他の新幹線列車に影響の出ないようにしなければならないが、 福島以北の奥羽本線区間内は無理に最高速度130km/hで運転する必要はなく、山形県独自の観光列車として、 板谷峠から始まる県内の景色を乗客にゆっくりと楽しんで頂ければ良いのではないだろうか。


『お座敷新幹線』の対外的効果は計り知れないものがある。

山形県の観光キーワードを考慮した場合、県内全ての市町村に存在する「温泉」、さくらんぼやラ・フランスに代表される「果物」、 四季折々の魅力を満喫できる豊かな「自然」、日本の原風景を思い出させる「田舎的風景」等々が一般的で、 「お座敷」というキーワードはこれらに合致するものであることは容易に判断できる。
また、外国人旅行者の視点で見た場合「Japanese Ozashiki Shinkansen」は東洋的(日本的)魅力溢れる乗り物であると考えられ、 これらを満喫しながらの移動は諸外国からの観光客にもきっと満足して頂けるものと推察する。

車内でのイベント(演出)も重要に要素のひとつである。 例えば、車内販売も車販スタッフ(NREスタッフ)のユニホームから考えてみたい。 この列車だけは「おしん」に代表される素朴な和装か、庄内おぱこ、または花笠の衣装を勧めたい。 但し「カセ鳥」や「ばけもの」等の衣装は行き過ぎと思われるので特別な場合のみにしないといけない。
取扱い商品にも工夫を凝らし、山形県内産商品でのみ構成した商品郡の他に、 弁当等には一時期、最上川舟下りが扱っていた「おしん弁当」のような商品も良いと考えられる。 当然のことではあるが「きらきらうえつ」のようにワンコイン(500円)で山形県内産の地酒を楽しめる 販売方法や山形県内の観光をアピールする装備・システムが必須であることは言うまでも無い。



大切なことは単に『400系電車の存続』などではなく、廃止されることが決まった400系電車を「資源」として再生し、 今後の山形県の観光に如何にして役立てるかということを考えることにある。
何故なら400系電車を保有する「山形ジェイアール直行特急保有株式会社」の出資者には山形県が含まれており、 出資金の一部は県民税から支出された経緯もあることから、400系電車は山形県民共有の財産であると考えられるからである。


  執筆:鉄道友の会・山形支部事務局長 柴田 英成 (鉄道観光研究家)   平成19年07月04日
                                  鉄道ダイヤ情報2007年10月号に抜粋掲載

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